「彼女の分の生活費、ねぇ・・・」
 安定したバイト探すしかないか・・・。
 結局、旅から帰った次の日も、その次の日も彼女は家に帰らなかった。
 しかも母親となにやら打ち解けていて、俺が「そろそろ帰ったら」とかいうと有加は寂しそうな泣き出しそうな顔に明らかに演技だとわかるようになって、母親は侮蔑の念を込めた顔でこちらを見てくる。
 それでもう1週間になる。
 しかしまぁ、ウチは裕福ではない。
 母親は自分が帰そうとしていないにもかかわらず、俺に彼女の生活費を要求してきた。
 ・・・・まぁ、もうなんか諦めているけどね。
 とりあえず、時間に融通が利いてなるべくいい給料で交通の便がいいトコで初めて大学生活に支障が出ないバイトだと思う。
 そんなものがバイト情報誌の類に転がっている事なんで限りなく稀だし、仮にあったとして自分が受かるとは限らない。
 自分の足で探すしか、方法はない。
 『新規オープン!バイト募集中※歩合制』
 なんか見つけた。
 明らか怪しそうな店ではある。
 だが歩合制・・・・安定はしていないけど、新規オープンとかなら宣伝とかで銘打てば物珍しさで来る人は多そうだ。
「話だけでもきくかな・・・」
 とりあえず中に入ってみる。
 中は以前行った『魔法店』によく似た雰囲気。
 しかしまぁ、あそこよかよっぽど少女趣味な気もする。
 オレの趣味はいいほうとはいえないから、これが最近の流行なのかもしれないが・・・わからん。
「すんませ〜ん」
 とりあえず店の人に限らず、客らしき人すら見受けられないのでレジっぽい所で声を出してみる。
 ・・・でてこない。
 こうゆう店では中々出てこないのが流行りなのですか?
「バイト探しか?客か?」
 でてきた。
 とゆうか、いた。
 普通に俺が立っている前のレジっぽいトコにいた。
 でも突然現れたというわけではなさそうである。
「・・・不思議に思ったりしないのか?」
「最近はもうこういう状況に慣れたんで」
 まぁ、見た目は明らかに子ども。
 よくあるよくある(漫画とかで)。
 とりあえずその後は『実は80をこえている』『魔法が使える』『お前にも素質はあるようだ』などお約束な事をいくつもいわれる。
「てゆうかバイトなんで、できれば採用の事や給料、シフトのことききたいんすけど」
 なんか慣れてしまって感動がここまで薄い自分が悲しい・・・。
「・・・フム、まぁじゃあ、特技や長所なんかをいってみぃ」
 お約束な『老人語』。
 実際使っているところを見ることはまずない。
「特技っすか・・・強いていうなら器用貧乏なとこですかね?長所は社交的?」
「貧乏・・・嫌な響きだな・・・どういう意味だ?」
 ・・・本当は見た目通りな年齢か?
 魔法とかじゃなく、単に夢見るリアル子どもな気もしてきた。
「あ〜・・・まぁ浅く広く、大抵の事は出来るけど特筆すべきものは特にない、って感じですかね」
 好みの事柄は深く狭いけど。
 基本的に俺には才能というものがないと思う。
 国語能力が異常に高いわけでもないし、数学的に物事を考える事も出来ない。
 美術の才能があるわけでも、武術の才能があるわけでもないと思う。
 さっき「そういう才能がある」的な事をいわれたが、魔法とかそういう非現実的な要素に運命的なことが絡まって巻き込まれているわけでもないと思う。
 まぁ、もし才能というものがあるのなら「行動予測」といったところだろうか。
 非現実的要素や現実的要素の境を無視して、こうすればこうなるんじゃないか、この状況ではこうすればいいんじゃないかという自己の行動とそれから派生する状況の予測をたてることが出来る方ではあると思う。
 ただこれは才能というよりか・・・慣れ?
 人より幅広く行動をしてはいると思う。
 それゆえに、色々予測できる。
 だからあまりに逸脱しすぎるとついていけない気もする。
 役に立たないなぁ・・・。
 少なくとも「ずる賢く」「楽しさを求めて」生きるうえでは、かなり役に立つとは思うので、べつにいいのだが・・・。
「えっと・・・結局採用なんですかね?」
「ん?ああ、そうだな。じゃあここにサインを・・・」
「先に契約書一読させていただきますが、いいっすか?」
「あ、ああ・・・」
 こういうのはしっかりしておかなきゃいけない。
 その後、特に怪しい文面はなかったのでサインをし、『ここ』の従業員として来週から不定期で働く事になった。
 給料はコレ以上従業員が増えない限り、全体の利益の25%。
 がんばればバイトという枠からかけ離れた法外な利益を得ることが出来るかもしれない。
 そしてこの日は家に帰り、一応休日ではあったのだが休むことなくたまっていた大学の課題をこなし、一日を終えた。
 現在のヒロイン、”ゆかちん”はこういうときにヒロインらしい行動を殆どしないので、おもんない。

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