「暇やナ〜」 「・・・・暇なんだ?」 「!ちゃう!」 口癖というものが世の中にはある。 俺の口癖は主に二つあるが、そのうちひとつがこれ「暇やナ」 今は地獄の朝食を食べ終わり、丁度家に向かっている。 明日からは普通に大学もあるので、家には帰らないとまずい。 彼女には連絡先だけ教えて一旦別れようと思ったのだがそうもいかなかった。 「・・・つうか結局何処なん?家」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 ずっとこれだ。 住所に限らず、少しでも離れようとする話題を出すたびに黙秘が始まる。 いや別に離れたいわけでもないが・・・・。 「・・・・・うちきても泊められるようなスペースないんすけど?」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 因みに現在は徒歩。 もともとお金をかける予定のない旅ではあったのだが、女性連れともなると流石に電車に乗るべきかとも思ったのだが・・・。 「普通に持ち金ないしなぁ・・・・もう」 「ありますよ?」 「・・・いらんよ」 家に帰れという話題以外には普通にのってくるんだけどねぇ・・・・。 「・・・・とりあえず、さ」 「はい?」 いい加減ここで家に帰れというのもアレだしなぁ・・・。 「家に帰ろうぜ」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 ・・・頭に選択肢が他に浮かばないんだよ。 本当に、うちに来ても泊められるような状況ではない。 家の広さ的にも問題なのだが、俺は一人暮らしではない。 母と亀二匹が家には待っている。 因みに他に犬一匹と父一人が単身赴任で少しばかり遠くに住んでいるが、今回は関係ない。 いや実際、俺が女連れて帰ってきても追い出すような人ではないが・・・。 限りなくうざそう。 普通に過剰に歓迎してきそうだ。 普通に過剰・・・・正しくは、『いつものように』過剰に。 うちの母親は俺が女友達を連れてくるとあまり可愛い方じゃなかったら「ブスだね〜」と、それなりに可愛かったら「まぁまぁ?」と、そして可愛かったら 「・・・うちの息子騙してるの?」と、あくまで冗談めかして言ってくる。 その後相手の顔に関わらず海外通販番組の司会者並にオーバーな歓迎をするわけだが・・・。 あれは正直勘弁して欲しいと思う。 特にこの人妙にノリノリだから、うちの母親に「結婚を前提に?」とか訊かれたら「はい」とか即答しそうだ。 ・・・・・・マジでしそうだ。 俺が顔をマジマジと見つめていると、彼女はそっと眼を閉じた。 「・・・・このノリがまじこえぇわ」 ノリがいい相手は嫌いではないが、うちに呼ぶ分には避けたい。 「・・・しないんですか?」 「しません」 「付き合ってるのに?」 「ピュアなの」 普通セリフが逆だよ・・・・。 俺がキス求める立場じゃないのか?顔的にも。 その後も家のある街に着くまで、ずっとこんなノリは続いた。 「・・・・流石に疲れた」 足がではなく、喉が。 彼女の方はけろりとしている。 デススロート女め・・・。 「あ〜・・・・彼女欲し」 「・・・・・・・ふ〜ん」 「!!」 口癖2。 特に意識してではないが「あ〜・・・」といった後に一番出てきてしまうセリフだ。 本当は「あ〜・・・・疲れた」というつもりだったが、直前にも疲れたといっている手前嫌味に聞こえるとあれなので違うことを言おうとしてとっさに出てきてしまった。 何故ってそういうセリフをはいている期間が長かったから。 「えと・・・・・すんません」 「いいよ?別に」 ここにつくまでの間で、かなり相手の口調が変わった。 もう殆どため口。 丁寧語は何処へやら。 てかどんどんキャラ変わりすぎね、この人。 そんなことを考えているうちに既に家の前へ。 「・・・あ〜、もういいや」 家に入れるしかなさそうだ。 「もう諦めたの?」 「察してんなら帰ってくださいよ・・・・」 「離れたいんだ?」 「そうじゃなく・・・」 とりあえず、家に入って落ち着くとしよう。 「・・・そーいや、名前ってきいてたっけ?」 「・・・多分あなたの名前しか聞いてないかな」 じゃあどうぞ、と手の平を上に向けた状態で促しをいれる。 「・・・・有加、カナ?」 「かなて・・・」 「じゃあ”ゆかちん”で」 「で・・・・・」 まぁもういいや。 「ほらゆかちん、はやくしな」 「はいはい」 はいは一回!とか言うノリだが、もう疲れましたよ、っと。
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