「とりあえず魔法使いって駒ができたわけだし、次は旅でも、ね」 現在、山中。 話し相手がいるわけはないが、話さないと自分の存在が虚ろになりそうなくらい静かだ。 「・・・ちゅうか駒とか、俺最低なこといってね?」 薄ら笑いながら呟く。 さみしがりってわけでもないが、寂しい人間だな、おい。 ・・・・・・目的地には着いた。 何もない。 本来ならここで女の幽霊と遭遇するはずだったのだが・・・・。 何もない。 「・・・女性かむぉ〜〜〜〜ん!」 ものすごい響く。 つうか馬鹿だ。 こんなところ誰かに見られたくない。 「・・・・・・・」 大抵お約束としてこういうこと考えている時に誰かが見ていたり、物音がしたりするものじゃないのか? 何も起こらない。 今回は本当に外れだったらしい。 帰りも迷いようがない。 今いる場所から、民家が見える。 崖でそこから降りることこそ出来ないが、助けくらい呼べる場所だ。 「・・・・帰るか」 結構手間がかかった場所だったわりに、しけている。 あの民家が素敵ステイツかもしてないが、その可能性も今回は低そうだ。 ・・・・・・・。 「・・・うわ、もうついたよ」 くるとき山にはいった道に出た。 本気で何もなかったな・・・。 「・・・・・・・・いや、そうでもないか?」 何かが揺れる音がした。 音源はさっきまで静かだった山中だ。 中に走り入る。 もしかしたら動物かもしれないが、多分違う。 この音は聞き覚えがある。 「・・・やっぱか」 息を切らしてついた「音源」には、木の枝にロープを結び付けている女性がいた。 「・・・・なにあなた。とめないでよ」 なんか言っているが、その言葉は無視して顔を覗きこむ。 ・・・よし、美人だ。 いやまぁ、美人じゃなくても助けるが、もし美人だったらイベントが起きるように、ね。 「・・・自殺するくらいなら俺と付き合ってよ」 「………は?」 「実は既に死んでいるとかでも可」 実際はそれほど好ましいオチではないけどね。 「・・・何言っているの?」 「生きている人?」 呆れ顔でこっちを見ている。 この反応は生きている人だろう。 「・・・なに?とめてるの?」 「いやまだ別にとめちゃいない」 「・・・・・・・・・」 深く溜め息をつく木の上の女性。 わかる。 あの表情は「どんだけ不幸なの私の人生」って顔だ。 「・・・・・・・・」 俺の事を無視して、木の枝にロープを巻きつけ始めた。 「美人さんなんだからやめようぜ。死に方汚いよ、それ」 「・・・あんたなんなの!」 きれた。 ありがちな反応だ。 こうゆう反応の人なら、とめる自信はある。 「ただの馬鹿じゃない?きっと」 「・・・・・・!」 日常の一こまとして今のセリフを聞けば「自分で言うな」とかいえるのだろうが、この状況は彼女が体験してきた日常にはない空気だろう。 「ん〜・・・月並みだけど、何で?」 「・・・言う必要ない」 「だろうね」 真っ赤になる女性。 手元に凶器があれば俺に投げつけてくるだろう。 「いや、そういうのを馬鹿にする気は一切ないけどさ。死ぬなんてやめたほうがいいよ?」 「・・・なにがしたいの?」 ・・・少し、難しくなった。 一切聞かないタイプだと話がしにくい。 「身体が目的ではないよ」 「・・・・・・・」 ・・・良し、聞かないタイプではない。 「ん〜・・・説得してもいいんだけどさ。きくような状況じゃないショ?」 「・・・・」 「因みにさ、その高さだと降りた勢いで死ぬことはないし、俺ポケットにナイフはいってるから首絞まりきる前にロープにきれるぜ?」 降りても無駄、とやんわり告げる。 「とりあえず下に降りない?どうせ俺がここにいる限り君いけないよ」 「・・・・・・・・・・」 考え込んで。 「・・・・・・・」 飛び降りた。 キャッチできないほど反射神経は鈍くない。 ・・・まぁ、体力はないが。 「・・・・と」 プチお姫様抱っこ。 「・・・王子役がこんなブ男でスンマセンね」 自嘲気味にいう。 一瞬だけだが、女性は笑った。 脈はある。 「で、俺の昔話、戯言と思っていいから聞いてくれる?」 一応実話。 脚色もしていない。 過去な分、美化はされているだろうが・・・。 意識してのものではない。 「・・・ってわけで、今俺はここに生きている、と」 少し困った表情になっている。 「・・・まだ死にたい?」 黙りこむ。 まぁ、こんなんで死ぬのをやめるのは物語の中くらいだ。 「ん〜・・・とりあえず、デートしてよ」 強引には引っ張らず、そっと、決して痛くないように手を引っ張る。 座り込んでいたので、ズボンに泥がついているので其れを払い落とす。 俺の過去の話は、死んだ人を思いとどまらせることこそ出来ないが、俺への同情でしばらくは死ぬという意識をごまかす事程度は出来る。 この後は、俺の行動にミスは許されない。 この人の性格にもよるが、全ての終わりにもう一度死のうとする人は多い。 出来る限り、人には死んで欲しくない。 それは純粋な気持ちだ。 「・・・じゃあまぁ、一旦下降りますか」 そういって、山を降りる。 今回の旅にはお金をかけるつもりはなかったが、同伴がいれば別だ。 来る途中あった宿に行く。 幸いそこまで遅い時間でもなかった為、宿自体はあいていた。 泥まみれの俺たちを見て誤った見解ではあるが察してくれたのか、それともただ単にいい人だったのか、タオルをもってきてくれた。 「えと・・・・あいてます?」 尋ねると店主は、笑顔で迎えてくれた。 これに裏を探る事も出来るが、イベントは二つ起こることはほぼない。 ファンタジー的に。 ・・・リアルだし、一応警戒はしておくが。 ここまで一切抵抗がなかった女性も、少し躊躇っている所が見られた。 部屋、2部屋あるか訪ねるべきか? 実際はないほうがいい。 漫画と違って、一人にさせて逃げられたらもう会うことは難しい。 店主が察して、1部屋しかないといってくれれば良いが、誤った察しかただと困る。 お金がないとか下手なことを言うのもまずい。 ここは、女性の意向は無視してすすもう。 俺が何もしなければ問題ない。 理性というもので抑えればいいだけの話だ。 「・・・自信ねぇなぁ」 「・・・え?」 今回初めて落ち着いた表情で女性が声を漏らした。 「いや、なんでも。いって・・・・いいかな?」 一応尋ねる。 女性は俯いて、ついてきた。 まだ俺の話の効果が続いているのか、信用してくれたのか。 ・・・これからわかるか。 そして、部屋に入って店主がいなくなった後、向かい合った状態で座布団に正座をして、沈黙が続いた―――――。
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