まだ微妙に喉が痛い。
 でも、今日はどうしても少し外出をしたい。
 前々から目をつけていた、自称魔法店。
 多分、というかほぼ確実にそんなものが存在するわけないのだけど・・・・。
 もしあったら、計画に組み込みたい。
 これは俺の計画完成の為に結構重要な鍵にもなりえることだ。
 まぁ、本当に触れ込みどおりなら、だが。
 場所は最近建てられたビルと古くからあるビルの間の僅かな隙間に入ってすぐの所にある階段を上っていったところにある小さな店だ。
 とりあえずぶらぶらとそこへ向かうことにして、準備しておいた荷物を持ち、家を出る。
 ・・・到着。
 早速階段を上って店の前にたってみる。
「・・・・・・・・・」
 入り口には両の目の色が違う猫の写真が貼ってある。
 片目はクリーム色、片目は緑がかった青。
 一瞬目のところに穴を開けられているようにも見えた。
 一切光を反射していない目は偽者のように見え、後ろの壁の色がクリーム色だったからだ。
 他にも数枚猫の写真は貼ってあるが、普通の目の色はあまりなく、どれにも光が入って見えない。
 素人がパソコン加工で目の色を潰したようにさえ見える。
 ただ全体的に見ると、そうゆうことをした写真には残念ながら見えない。
 入り口のドアの小さな窓から店内を覗く。
 魔女を模した人形が天井から下げられ、棚には不均等に並べられた小瓶が一杯。
 店の入り口すぐの所にあるこあたらしいレジスターがなければ、まさに理想の店だ。
 入り口のドアを開ける。
 誰もいない。
「・・・・・・・・・すんませ〜ん?」
 誰も出てこない。
 しかし人がいる感じはする。
 店の奥のほうで音楽を流しているコンポが電源のついた状態でおいてある事から考えても、誰かいるのだろう。
「・・・・・ん?」
 がたごとと音がした。
 音のしたほうを見る。
 『washroom』。
 ・・・・どうやら店の人はトイレにいるらしい。
 なんとなくいにくかったので、店の外で待つ。
「・・・・・しかしなんでこんなに・・・・・・・・・?」
 妙に物音がでかい。
 トイレでこんな大きな物音を、しかも長時間たてることがあるか?
 ・・・・・・まぁ、わからないか。
 トイレ器具の整理かもしれないし・・・・・。
「ったらぁ・・・・・・!」
「・・・ん?」
 一瞬店内から女性の声が聞こえた。
 店員かな?と店のドアの方を見る。
 その刹那、ドアが勢いよく開く。
「・・・・・逃げて!」
「は・・・・・だっ!?」
 中から出てきた女性はそれなりに可愛い娘で、目が合った瞬間に勢いよくだかさってきた。
 中から少し老けた声で「待ちなさい」的な声が聞こえた。
 ここで一番面白くなる手段は一つ。
「・・・・了解」
 わけもわからず逃げる的な漫画の主人公には俺はなれない。
 しかし、ここで落ち着いて放っておくほど、一般の人でもない。
 取り合えずだかさった状態の女の子を抱えた体勢で、階段を駆け下りる。
「とりあえず走りにくいから後ろきて!」
 そういって、オンブの状態に持ち直して、とりあえず走る。
 言っちゃ悪いが俺はそれほど体力があるほうでもないので、現在地から家まで走り続ける体力はない。
 とりあえず、近場の友人の家を目指すことにする。
 しかしその友人の家には色々な事情があって多少入りにくい。
 ・・・・まぁ、緊急事態だし、何とかなるかもしれない。
 ダメだったらそれから考えるとして、向かう。
「・・・・・・・・・」
 妙な事に、息が全く切れない。
 俺にこんな体力があったか・・・・・?
「・・・・・と!」
 赤信号。
 振り向いたわけじゃないが、明らかに後ろから誰かが走ってきている感じがする。
 このまま止まっていたら追いつかれるが、曲がってしまうと目的にはかなりの遠回りになる。
 そんな考えを頭に巡らしている間に、音で判断できるくらいそばまで『誰か』は近づいている。
 捕まるな、と思った瞬間、景色が変わった。
 信号を渡った側に立っている。
 状況判断(なるべく高速)。
 ・・・・瞬間移動?
 こうゆう時、自分の性格は便利だ。
 現実的に考えるより、とりあえず不思議思考で考えられる。
 まぁ、冷静に現実を見ている人からすれば「逃避」以外の何ものでもないわけだが・・・。
 あいにく、逃避で考えているわけではない。
 現状からして、それ以外には考えにくい。
 とりあえず、いま気になっている事柄については後で考え直すとしよう。
 折角赤信号の状態で渡れたんだから、友人の家へと向かったほうがいい。
 追ってきている人も同じことが出来れば既に隣にいるだろうし、いないということは今は逃げるチャンスだ。
 とりあえず、走る。

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